語学学習のコツがわかる
高野秀行の本は非日常を味わいたいという欲求を満たしてくれるので、ここ十年くらいで何冊も読んでいたのだが、この本は語学にフォーカスした内容になっており、他の作品とは一風変わった作りになっている。
この本では、著者の学生時代から必要に迫られて学んできた言語にまつわるエピソードが書かれているのだが、その中でどうしたら効率的に学習できるのかということをうまく伝えてくれている。
それだけでなく、言語学の専門家の監修もされているようで、間違った情報もないように工夫されているらしい。
ノンフィクション作家だけあって飽きずに読めるし、変な英語学習法とかの本を読むよりずっとためになるのではないだろうか。
登場する言語がおもしろい
著者が学んでいく言語はフランス語やポルトガル語などいわゆる「メジャー言語」にとどまらず、アフリカや東南アジア系の言語にも及び、学習書などが存在しないようなリンガラ語、ワ語など存在すらあまり知られていない言語も登場する。
ワ語はミャンマー政府の統治が及ばない少数民族が暮らすエリアの言語で、著者はアヘン栽培を取材した際に習得したのだが、当時は外国人が踏み入れたことのないような場所で、現地の言葉を学んでいく様子は面白い。
最近、書店に行ったらワ語の本が売っていて少しびっくりした。
高野作品の魅力を再認識
この著者はミャンマーからインドに密入国したこともあり、インドに入国拒否されていたりするなど、滅茶苦茶なことをやっているイメージがある一方で、他の作品を読んでいるときちんと各地の言語を習得しながら取材していることがわかる。
過去の作品は大体読んだはずだが、また読み返したくなってきた。
私のおすすめは謎の独立国家ソマリランド、西南シルクロードは密林に消える (講談社文庫)、【カラー版】アヘン王国潜入記 (集英社文庫)の3つだ。
なかなか海外旅行にも行けないこんな時こそ高野作品で冒険気分を味わうのもいいかもしれない。