娯楽として読むつもりが
フリーのロシア語講師として数々の著書で知られる黒田さんの最新作(当時)を読んでみた。
この人の本は昔からよく読んでいて、基本的には何か新しい知識を得るためというよりは、娯楽として楽しむものであるという認識だった。
今回もちょっとした息抜きに読んでみようという気持ちで読み始めたのだが、意外と語学上達に役立ちそうな内容が多かった。
ロシア語上達の道
この本のあらすじは、著者の黒田さんが高校生の時に東京にあったロシア語教室「ミール」に通い始め、そこでスパルタ式(?)の訓練を受けながら上達していくというものである。
そこでどんな授業が行われていたかが詳しく書かれている。
授業ではひたすら発音させられ、しかもなかなか先生から認めてもらえない、そんな感じで黒田さんも苦労されていたようだ。
そんな授業についていくため、テキストの暗唱と発音練習を繰り返し、少しづつレベルの高いクラスに進級していった。
そして通訳や講師を務めるまで上達するのだが、それまで黒田さんがミールで出会った個性的なクラスメイト達(有名な方もいる)が登場して様々なエピソードが語られている。
こういうところが読み物としても非常に面白くて飽きない。
黒田さんの著作はだいたいこんな感じですぐに読み終えてしまう。
どうやって継続していたのか
この本を読んで感じたことがある。
一番大事なことが帯に書いてあるということだ。
" ひたすら発音、そして暗唱 他のやり方は知らない。"
なるほど、これが上達の王道なのか、というのが率直な感想だ。
自分が外国語の学習をやってある程度成果が出たときも、とにかく暗唱した場合が多かったので、ピンとくる。
黒田さんはミールのテキストになっている「標準ロシア語入門」の内容を繰り返し発音し暗唱するということを徹底して行っていた。
そうしないと授業で先生に認めてもらえないからだ。
" わたしは多喜子先生から「ハラショー」を引き出すため、家で発音練習に励むようになった。"
上達しても何の見返りもないはずなのに、ミールの先生から認めてもらうことをモチベーションとして発音・暗唱を繰り返していたようだ。
黒田さんにとっては、先生から「ハラショー」を引き出すことが学習に対する「見返り」 になっていて、それが学習継続の要因だったのだろう。
語学を継続するには何らかの「見返り」、「報酬」が必要なのかもしれない。
そしてそれは金銭的なものでなくても成立しそうだということが何となくわかった。
私も真似して「標準ロシア語入門」を購入して、発音・暗唱の徹底を試みたが、その成果をチェックしてくれる先生はおらず、1週間も継続できなかった。